気象観測や情報通信を支える人工衛星に関わる技術には、人類の宇宙開発を一層進歩させる重要な基盤技術が存在する。人工衛星に用いられる電線には、その過酷な環境において高度な耐久性が求められる。これまで、強度や屈曲性などから熱可塑性フッ素樹脂ETFE被覆電線が用いられているが、耐熱性、耐放射線性などに課題があった。本技術開発は、こうした課題を解決し、人工衛星技術を著しく進歩させることを狙ったものである。
こうした背景において、高耐熱性、高耐放射線性を兼ね備えたポリイミド樹脂の適用を考え、ETFE電線の特長を活かしたまま、ポリイミド樹脂の被覆を創案した(図1)。しかしながら、ポリイミド樹脂は熱硬化性を有し、高温にて硬化させる必要がある。一方、下地であるETFE被覆は高温に弱く溶解してしまうことから、これら異種・異特性樹脂の同時成形は困難を極めた。そこで、最表面のポリイミド樹脂のみを選択加熱により、熱硬化を迅速かつ連続的に行うことで成形し(図2)、この課題を解決した。本技術開発では、そのプロセス原理を適用して、ポリイミド樹脂被覆ETFE電線の連続成形システムの開発に取り組む。
本技術開発により、今後ますます需要進展が予測される人工衛星の高信頼化に著しく貢献できるとともに、HV、EVなどに用いられる高信頼性を要求される電線、そして耐火性が要求される建築物や地下配線に用いられる電線など、将来の電線技術において高信頼化、高安全性を具現化することで、多大な社会的波及効果が期待される。
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