日本人女性の乳がんによる死者は、近年急増しているにもかかわらず、日本人女性のマンモグラフィー受診率は、欧米の1/3程度に留まっている。この原因として、(1)乳房の小ささによる診断時の痛み、(2)乳腺の割合が高く、悪性腫瘤の検出率が悪いこと、(3)X線被曝量が多いことが挙げられている。特に、乳腺、悪性腫瘤の吸収係数が、それぞれ0.80cm-1、0.85cm-1と、脂肪の0.45cm-1に比べて極めて近接していることが、診断を難しくしている。
本申請は、図1に示すような光子計数型CdTe系検出器により、3つのエネルギー領域(BIN)に分けて検出したX線の値から、厚さに依存しない特性を導き、それを診断に用いることで、上記の問題を解決できる新方式乳房検査装置の開発を目的とする。具体的には、検出値から各BINごとの線源弱係数μ1, μ2, μ3を求め、これをベクトルμ=(μ1, μ2, μ3)の長さで規格化した値μ1*、μ2*、μ3*を判別に用いる。これにより厚さによらない識別が可能となる。さらに、開発者たちは、ビームハードニング補正を行うことで、判別の精度が向上することを見出している。また、この高感度化の結果、X線管電圧を従来の23KV〜35KVから50KVに高電圧化でき、被曝線量をこれまでの1/2以下にすることができる。
本開発が達成できれば、乳がん検査の受診率を大幅に向上できる可能性があり、結果として、乳がんによる死者を低減できると期待できることから、公益性の高いものである。また、これから多くの日本人、ひいては、アジア人の検診に活用される可能性もあり、市場性も十分にあると考えられる。


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