パワー半導体の素材であるSiCは、従来のSiに比べ、絶縁破壊電界強度が10倍、バンドギャップが3倍で、電力損失の低減が期待できます。SiCパワーデバイスは、既に鉄道や急速充電器などでの採用実績を持ち、更なる高性能化、低コスト化を目指して、各社開発を進めております。
デバイス性能を左右する重要な作製プロセスの1つとして、ゲート酸化膜の成膜プロセスがありますが、品質の良いゲート酸化膜ができたとしても、既存技術では、その後の層間絶縁膜形成のプロセスで、SiCを高温で酸化させる事によって耐圧の高い熱酸化膜を形成しており、デバイス特性の劣化が生じ、SiCの本来のポテンシャルを充分に活かすことができていないのが現状です。
今回開発を行った技術は、層間絶縁膜を室温~250度以下の低温で形成するためのプロセス及び処理装置です。層間絶縁膜を低温で形成した後、当社開発の装置を用いて高密度ラジカルを照射することで、低温でも熱酸化膜と同等のエッチング耐性を持つ緻密な膜ができることを確認しました。MOSダイオード構造により絶縁破壊電界を測定した結果からも、熱酸化膜と同レベルの絶縁破壊電圧であることが分かり、低温で絶縁膜の耐圧を上げることが可能となりました。詳細データは、弊社HP上で公開しております。(現在は、4インチ基板まで均一に処理することができます。)
近年は、環境への負荷軽減のため、自動車、航空機の電動化や、データセンター需要増など、より高性能で高い信頼性をもつパワーデバイスへの期待が高まっております。
そうした成長の一躍を担うことができるよう、活動を続けて参る所存です。
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