当社では、下肢閉塞性動脈硬化症(LEAD)の治療効果向上を目指して、血液適合性が報告されている炭素系ナノコーティングとそれに最適に設計した薬剤溶出・生分解性ポリマーコーティングを応用した、浅大腿動脈(SFA:膝上の動脈)用の薬剤溶出性ステント(DES):Hybrid-DESを開発しています。
下肢閉塞性動脈硬化症(LEAD)は全身性の動脈硬化症(心筋梗塞・脳梗塞などの原因)が下肢に発症し、血管が閉塞する疾患である。LEADの一般的治療法は、血管内治療による血流再開です。ステントは金属製の網目状円筒で、血管内治療において長期の血管開存を目的とした留置デバイスとして使用されます。フッ素添加ダイヤモンドライクカーボン(F-DLC)は、血栓(血液成分の凝集体)や炎症細胞付着を低減する血液適合性を有することが報告されています*。当社では下肢ステントの治療効果向上を目指して、F-DLCを下肢ステントに用いられるニッケルチタン合金にコーティング可能な技術を実現してきました。そして、独自に設計した薬剤溶出性コーティングと組み合わせて、下肢用のNiTiステントとして世界で初めて、初期の薬剤溶出後にポリマーが消失し炭素系ナノコーティングの表面が現れるHybrid-DESを開発してきました。本開発では、これまで膝下(BTK)ステントの実用化に特化して開発を進めてきたノウハウを活かして、SFA用Hybrid-DESの実現を目指しました。
本開発ではSFA用に新たにステントデザインを開発するところから着手し、カテーテルの改良にも取り組み、SFA用のHybrid-DESデリバリーシステムの実現を達成しました。
*: T. Saito, T. Hasebe, S. Yohena, et al., Antithrombogenicity of fluorinated diamond-like carbon films, Diam. Relat. Mater. (2005)
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