「ハーモニーと心の進化」を胸に 琵琶湖発、日本の環境先進企業へ
「木質加熱アスファルト舗装合材大型混合機/保温ボックス開発」 第72回(平成15年度第2次)/第80回(平成19年度第2次)助成 田中建材株式会社(滋賀県) 代表取締役 田中 稔さん |
![]() 業績200倍を目指す田中社長(右)と リサイクル事業部・ ![]() |
水蒸気発泡でたどり着いた“日本初”
■進んでいない木質廃材のリサイクル | |
「持続可能な社会の実現」が増々重要課題となった今日、解体家屋や間伐材等の木質廃材においても、その効率的リサイクル方法の開発が急がれている。製紙やパーティクルボードの原料使用のほか、肥料、木炭原料への活用等も図られたが伸び悩んだ。今後、放置間伐材、解体廃材の焼却処分増加による温暖化ガス排出問題の深刻化と併せ、木質不足に陥る地域の発生も懸念されている。 その中、より付加価値のあるリサイクル方法として建設・舗装業界が着目したのが木質樹脂舗装。チップ化した木質を常温状態で樹脂製バインダー(接着剤)と混ぜた合材により一般歩道、公園、遊歩道、建物外周等を舗装するものである。しかし混合状態が不均一で強度面に難があり、製造は少量で施工単価も高く、市場での採用はなかなか進まなかった。 「混合は不可能と言われるアスファルトにこそ可能性がある」-そう直感した田中社長(当時専務)。平成10年、安価で安定性の高いアスファルトをバインダーにしての新たな舗装合材開発に着手した。
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■加熟したアスファルトに木質チップを均一に混ぜる | |
開発のテーマは2つ。1つは木質チップとアスファルトの均一混合を可能とし合材品質を飛躍的に向上する。そして製造を大量化してのコストダウンだ。数年をかけ、幾多の実験を重ねたどり着いたのが"水蒸気発泡"。加熱溶解したアスファルトに水蒸気を混入・発泡させ、木質チップの燃焼を抑えつつ撹拌性を高めた日本初の「木質加熱アスファルト舗装合材混合」技術である。この技術が平成15年、新技術開発財団の助成を得、高能率プラント(大型混合機)完成と平成17年の新舗装合材発売への道を開いた。 |
合材と施工-各方面から続々と高い評価 |
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■木質舗装の一大改革と呼ぶにふさわしい成果 | ||
これまでになかった木質加熱アスファルト舗装は、我が国で主流の砕石アスファルト舗装に対し、それまでの木質舗装が追求してきた『高断熱性と低蓄熱性による都市部のヒートアイランド現象の低減』『木質焼却処分時の大気への排出温暖化ガスを舗装部に固定』『衝撃吸収性による歩行者、ジョガーの膝関節等への負担軽減』等々のメリットを大幅にレベルアップ。同時に、公園の遊歩道等では問題なかったが、一般歩道には不適とされる強度基準をクリア。さらにはアスファルトを使用しているため、経年劣化後(10年以上経過し表面が摩耗しても木質チップは腐食や傷みを生じない)、廃棄処分することなく再加熱による再施工も可能にした。
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■さらにもう1つの“田中建材だけ” | ||
合材開発に加え施工効率化の面で木質加熱アスファルト舗装の価値を高めたのが「移動式合材保温ボックス」の開発だ。遠隔地の大親模施工では、プラントを解体、現地で組み立て混合する。保温ボックスは、近い現場や夜間作業等の小親模施工の際、ダンプカー等で合材を運搬していたのを、気温や運搬時問で合材が所定温度以下になるのを防ぐ目的で使用する。加熱オイル循環、遠赤熱伝達等の技術を組み合せ、48時間均一に保温し合材の品質を確保する。日本で稼働しているのは田中建材の5台だけ。新技術開発財団は平成19年の助成でこの開発にも貢献した。 こうした技術は平成14年以降、環境省次世代廃棄物処理技術基盤整備補助金事業、国交省NETIS登録、エコマーク取得、第8回エコプロダクツ大賞奨励賞等々、十指に余る表彰・認定を受けることとなった。そして、建設市場全体が縮小する中、昨年実績で施工面積は発売時から約12倍、売上で約40倍の成長を遂げ、木質舗装分野でトップシェアを維持している。
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業績200倍、世のため人のため、闘志は燃える |
■しかし、ぶつかった新技術の壁 |
「確かに数字は伸び、技術は各方面から高評価をいただきました。しかし新技術故に判断基準がなく、現実化する支援、採用を得るのは大変難しい。例えば一般歩道の舗装捷案でも事例、実境が重視され、特にコスト面でジャンルが異なり大手企業が扱う砕石アスファルトと比較される。優先されるべき利用する国民の価値判断の前に、行政段階での判断で機会が失われていく無名企業の新技術がぶつかる壁も実感しました」。 だから田中社長は新たな聞志を燃やす。最大課題である砕石アスファルトと同等のコスト達成。引合いが多い防災公園等での実績蓄積による環境価値の認識向上。一般歩道展開を視野に入れた木質舗装評価基準作成とパートナー発掘による全国フランチャイズ化等へのチャレンジである。7年前、商品の魅力に引かれ入社した ![]() |
■3年後、銀座と御堂筋をハーモニーロードウッドで… |
「事業拡大の一番の目標である一般歩道への採用が成れば、業績は100倍、いや200倍になります。それと併せ、3年後に東京・銀座、大阪・御堂筋の歩道を木質加熱アスファルトで舗装することが直近の夢です」と田中社長。その木質加熱アスファルト舗装は「ハーモニーロードウッド」とネーミングされている。ハーモニーは、企業活動を通じ地球や地域、人々と調和しながら心を進化させた行動を、個人や社会の豊かさにつなぐという同社の理念だ。今、全社員がこの「ハーモニーと心の進化」を胸に、琵琶湖発、日本の環境先進企業への意欲を加熟させている。 (取材日平成24年1月30日於滋賀県高島市・田中建材(株)) 田中建材(株)プロフィール 琵琶湖の自然と就航のロマンを歌って知られる「琵琶湖周航の歌」発祥の地である滋賀県高島市今津町に昭和35(1960)年創業。同42(1967)年に法人化。土木、建築、舗装、解体等建設関連、および産廃物収集運搬、再生骨材・線化資材製造販売等の環境開運を二本柱に事業展開。本助成で確立した木質加熱アスファルト舗装事業の推進に合わせ横浜市に関東営業所を開設。18名の社員一丸で環境先進企業としての成長を目指している。 |