新技術開発助成

人手を補うウロ取り自動化技術で、水産業の復興に貢献!

「ベビーホタテ自動ウロ取り装置の実用化」
第105回(令和2年度第1次)助成

株式会社石巻アパラタス(宮城県) 代表取締役社長 菅原 政幸さん
菅原政幸社長(右)と、菅原康裕専務
菅原政幸社長(右)と、菅原康裕専務

水産業への恩返しを胸に、業界の悲願に挑む

■待望された「ウロ」取り自動化装置
 東日本大震災からの水産業復興の柱でもある養殖ホタテ。水揚げされ、貝殻から剥かれたホタテは、貝柱、ヒモ、ウロなどの部位から成り、このうち暗褐色のウロには貝毒や有害重金属が蓄積しやすく、出荷前に除去する必要がある。従来から加工場での除去作業は人手に頼るしかないが、過疎や高齢化による労働力不足が深刻で、作業の効率化や自動化が強く求められている。主要産品のベビーホタテは、個体ごとに寸法や硬さが異なるため、ウロを確実に除去する自動装置の開発は技術的に極めて難しく、これまで成功例はなかった。石巻アパラタスは創業から水産業関連装置の開発修理を請負い、震災時にも顧客の復活を担ってきた会社である。水産業復興への思いと、時を同じく青森県漁連からの装置製作の強い要請も相まって、2014年、本格的にウロ取り装置の開発に着手した。

ベビーホタテの部位とウロ取りの実例
ベビーホタテの部位とウロ取りの実例

■精度が一定せず、試行錯誤の日々
 開発スタート時、画像処理技術とロボットアームを組み合わせた試験機を運用してみたが、安定したウロ取り精度は実現できなかった。当初目標とした90%以上の精度には遠く及ばず、50%を下回ることもあった。最大の障壁は、ベビーホタテの個体差だった。人が目視で容易に見分けられるウロも、個体ごとに明るさ、大きさ、色の濃淡が異なるため、機械には統一的な識別が困難だった。画像処理の精度を上げてみたが、的確なルール化が難しく、ウロの完全検出には限界があった。また、ハードウェア面では1ミリのずれがウロ取りの正確性に多大な影響を及ぼす。ウロは有毒成分を含んでいる上、貝柱自体が壊れてしまうと商品価値が損なわれるため、非常に繊細な動きが求められた。


画像認識AI導入が実用化への活路に

■貝柱を傷つけず、きれいにウロを除去
 活路になったのは、とある業者からAIの導入を勧められたことだ。正確にウロだけを除去するには、ホタテの各部位の検出が肝心だ。その峻別を行う検出システムは、従来は可視光画像と蛍光画像の重ね合わせで各部位を把握していたが、AIを組み込んだところ、検出精度が格段に高まった。いま搭載されている画像認識AIは、これまでの何万ものウロのパターンを学習している。いわば多くの経験を持つ熟練職人のようで、一層の技術向上も期待できる。さらに、不定形の貝柱を壊さず、人間同様のウロ取りスピードを実現した。かねてから懸案だったマシンハンドの挙動は、人間の動作を様々な角度から算出して、片方のマシンが貝柱を圧着保持する間に、二本の爪でウロを引きちぎる方式にした。これにより、個体差が大きいホタテの貝柱を傷付けず、ウロをすべて残さず除去できた。

開発した自動ウロ取り装置の構成
開発した自動ウロ取り装置の構成

■洗浄作業を効率化、生産性も向上
 開発陣は、厳しい衛生管理基準を満たすための改良も行った。当初の試験機から仕様変更して、コンベア方式にし、コンベア脇にシャワーを設置。常時洗浄できるようにした。さらに、ベルト素材をゴムからステンレス製メッシュに変更して洗浄性を高めた。従来の手作業では15分ごとに作業を中断して洗浄が必要だったが、新システムの導入で全体の洗浄は昼休みと終業時のみに限定され、稼働効率が大幅に向上した。

本社工場内での装置の調整
本社工場内での装置の調整

水産業の人手不足を解消し、事業拡大を目指す

■人手不足解消と生産性の追求を両立
 こうして完成した自動ウロ取り装置は、人手作業に匹敵する速度と品質でウロを除去する性能を実現した。目標処理量は1分間に120粒で、生産性の向上率は人力の105%にとどまるものの、将来にわたる人手不足を見越せば、当装置を駆使しながら生産性の追求が両立できるメリットがある。短期的には、1加工場あたり平均50名の人手の半数を、機械で補うことを目標に据えて、実際に企業からの引き合いも増加中で、業界の期待値の高さが伺える。

■水産業の復興を装置製作でサポート
 震災で甚大な被害を受けた水産業にとって、養殖ホタテは国内外で高い需要があり、付加価値も大きい。自動ウロ取り装置の成功が、被災企業や地域の復興に貢献するだけでなく、北日本の水産養殖業の発展にも寄与できるだろう。「AIや画像処理を活用し実用化に成功したことで、さらなる可能性が見えてきました。すでにカキ養殖への技術転用の話も上がっており、労働力不足に悩む水産業界において、システム化で持続的な発展に貢献していきたいです」と、菅原社長は未来への展望を語った。

(取材日 令和6年11月11日 宮城県石巻市・(株)石巻アパラタス)

(株)石巻アパラタス本社(宮城県石巻市)
(株)石巻アパラタス本社(宮城県石巻市)


(株) 石巻アパラタス プロフィール

1967年、「信頼と技術をかたちに創造する」という理念を掲げ、地域に根差した鉄工所として創業。当初、船舶機械の修理と加工整備を主業務とし、その後、時代に即して「水産加工場の仕事」を経て「食品加工工場の諸機械の製作・メンテナンス」を中心に事業展開。2011年、東日本大震災で自社工場が全壊するも翌々年には復旧。19年、新工場が竣工。20年から現社名となり、システムインテグレーション業務の展開を行う。従業員数9名。