植物研究助成

植物研究助成 20-17

地上型レーザーによる樹木のバイオマス量と物質生産量の把握

代表研究者 千葉大学 大学院園芸学研究科
准教授 梅木 清

背景

 京都議定書第一約束期間以降の次期枠組みにおいて森林による炭素吸収機能は重要視されており、樹木の炭素吸収量をより正確に測定することと、炭素吸収を実現する個体・群集レベルの物質生産機能を理解することは重要である。
 近年急速に発展した地上型レーザー計測技術を用いて樹木の幹・枝・葉の位置や大きさを効率良く正確に測定することが可能になってきた。また、シミュレーション等のモデル開発の発展により、現実に近い植物成長モデルが構築されてきている。地上型レーザーで測定した樹木の3次元構造と葉の光合成測定・環境条件を組み合わせた機能的・構造的樹木モデルを構築し、炭素固定を実現する樹木個体や群集の光合成機能・体制を理解することが可能になった。

目的

 本研究の第一の目的は最新の地上型レーザーを用いて、単木当たりの木質バイオマス量を把握することである。第二の目的は、測定された樹木3次元構造と葉の光合成特性を組み合わせ、環境の影響を受けながら光合成を行う樹木の機能と構造を再現する機能的・構造的樹木モデルを構築することである。継続課題では、個体の中間レベルの樹木構成単位(大枝など;以後、中間的構成単位とする)に注目し、地上型レーザーから中間的構成単位を抽出する技術の開発と中間的構成単位を基礎とした樹木・林分のモデルの開発を目標とする。

方法

 最新の地上型レーザーは独自の波長解析技術を採用しているため、樹冠内部からのレーザー反射を受け止めることが可能となり、より詳細な構造を把握できる。反射特性を利用し、データを木部と葉部に分類する。その後、地上型レーザーで得られた3次元空間内の点群データから中間的構成単位を完全に自動化された方法で抽出することは難しい。そこで、形状を認識した情報を事前に教師として加えた半自動的抽出方法を開発する。
 地上型レーザーによって把握された3次元構造を用いてレイトレーシング法により個葉に当たる光の強度を計算する。別に測定・定式化した個葉の光合成モデルを用いて、光強度を光合成速度に変換する。これまで実測不可能であった個体の光合成速度及びその環境応答を予測する。光合成能力がある半透明媒体を中間的構成単位と仮定した樹木・林分のモデルの開発をする。

期待される成果

 地上型レーザーで取得された形状データから木質部を抽出することにより、木質バイオマスの詳細把握が可能となる。また、個々の枝葉の3次元配置や中間的構成単位を抽出する方法が確立される。樹木の機能的・構造的樹木モデルが構築され、変動する環境に対応する樹木の炭素固定が予測できるようになり、炭素固定の面で効率的かつ新しい樹木の管理指針が作成できる。