
植物研究助成 20-21
MEMS技術を用いた超小型植物水分動態センサに関する 研究
代表研究者 | 香川大学 工学部 教授 下川 房男 |
【 背景 】 |
作物、果樹の生産では、植物の生育状態に合わせて適切な時期に灌水や養分補給を行なう必要があり、このためには、植物の生育に影響を与えず、その生育状態を的確にモニタリングするセンシング技術が不可欠である。これに対し、大半の農業現場では、無降雨日数に基づき、経験や勘に頼った灌水や養分補給が行なわれているのが現状である。植物の生体情報に基づいて作物や果樹の水分制御や施肥管理が実現できれば、 作物の生産性向上や高品質果実の安定生産に繋がることから、「植物水分動態センサ」の実用化が強く求められている。 |
【 目的 】 |
本研究の目的は、MEMS技術を駆使して、従来にない超小型(従来の約1/10)の「植物水分動態センサ」を実現し、これまでの樹木類の主幹部の樹液流測定に対し、最も重要となる作物、果樹の新梢末端や果柄等の細部を含む植物全体での水分動態測定に関する実験検証を行なうことである。更に、本研究の最終目的は、実験検証で得られた知見を基に、「植物水分動態センサ」の実用化を図り、作物の生産性向上や高品質果実の安定生産に資することである。 |
【 方法 】 |
本研究は、研究代表者らがこれまで培ってきた光・バイオ・医療関連のマイクロデバイスにおける基盤技術を基に、従来センサの基本構成を、マイクロ金型技術(数百μm程度の大きさのマイクロ針)やMEMS技術(マイクロヒ−タや温度計測機能を5mm角程度のSiチップ上に一体形成)等を融合して、超小型の「植物水分動態センサ」実現しようとするものである。本研究では、最初にセンサの構造設計やプロセス要素技術検討を基に、センサのプロトタイプ試作を行なう。次に、 試作した本センサを植物の新梢末端等に多点配置し、同時に従来のセンサを植物の主幹部に設置して樹液流の測定を行なうことで、樹液流量の相関関係を調べ、本センサの有用性((1)新梢末端において水分動態測定が可能、(2)本センサの高速応答性・安定性等)を実証する。 |
【 期待される成果 】 |
本センサは、植物の新梢末端や果柄等の水分量測定が可能なため、一例として、果樹栽培では、より的確な灌水制御を行なうことができる。これにより、(1)果樹栽培の高品質(果実糖度が高い)・安定生産(品質が揃った)等、高付加価値栽培が実現可能となる。また、本センサの導入により、(2)作物,果樹の生育ステ−ジに応じて最適な潅水制御を行うことができるため、結果的に作物、果樹の収穫量の増大が期待できる。更に、(3)本センサ群による森林、緑地等の樹木の水分動態のモニタリングと今後研究開発を予定している大気汚染等による生育障害モニタリング(マイクロガスセンサ)等との統合により、地球規模での森林環境保全にも貢献できる可能性がある。 |