
植物研究助成 21-12
施設果菜類の養液栽培における葉面積指数の非破壊計測手法の開発
代表研究者 | 東京大学 大学院農学生命科学研究科 助教 松田 怜 |
【 背景 】 |
施設園芸において、植物の情報を積極的に取得し、栽培管理・環境調節に利用することは、生産性向上や省力化に資するものと考えられる。葉面積指数 (以後,LAI) は植物情報の1つであり、ハイワイヤー誘引法を用いた施設果菜類生産におけるその適切な管理 (栽植密度の調整,摘葉の枚数と頻度の調整、側枝延長など) は生産効率向上のために重要である。なぜなら、LAIが最適値 (トマトの場合4-5 m2 m-2程度) より低い場合には個体群の光利用効率、ひいては収量が低下し、他方高い場合には肥料利用効率が低下するためである。しかし、LAIの精度の良い推定には高価な測器と煩雑な計測、あるいは熟練者の勘や経験が必要とされるのが現状である。したがって、わが国の施設果菜類の生産現場でLAIが直接計測されることは少ない。また、最適なLAIは季節ごとに異なるため、栽培期間を通じてLAIを定期的に把握できる手法が求められる。 |
【 目的 】 |
わが国の代表的な施設果菜類であるトマトの養液栽培を対象として、温室内環境要素とトマトの吸水量にもとづく個体群LAIの非破壊・連続計測手法を開発する。温室での栽培試験によってその精度を検証し、栽培管理に用いうる程度の精度を得ることを目指す。 |
【 方法 】 |
個体群LAIは平均個体葉面積と栽植密度の積であり、栽植密度は既知であるから、平均個体葉面積を計測できればすなわち個体群LAIが求められる。平均個体葉面積は、平均個体吸水量 (すなわち、平均個体蒸散量) を単位葉面積あたりの蒸散量で除することで求められる。平均個体吸水量は、養液栽培においては培地への給液量と培地からの排液量の差から容易に測定できる。単位葉面積あたりの蒸散量は、温室内日射量、気温、相対湿度、二酸化炭素濃度および葉温の計測にもとづき、群落光合成モデル (Monsi & Saeki、 1953)、光-光合成曲線モデル (Thornley、 1976) および気孔コンダクタ0ンスモデル (Leuning、 1995) を援用して、個体群直上からの積算LAIの関数として求める。 温室において実際にトマトを養液栽培してLAIを破壊的に測定し、上述の方法で計測したLAIと比較することで、精度を検証する。また、安価な市販デジタルカメラによる葉群可視画像計測・解析や目視による葉数測定を組み合わせることで,精度の向上も検討する。 |
【 期待される成果 】 |
本手法が確立されれば,新規就農者でも安価にかつ簡便にLAIを推定できるようになる。LAIの適切な管理が実現されることによって、収量増加および安定化・施肥量低減などの効果が期待できる。 |