植物研究助成

植物研究助成 29-22

ナタネ選抜系統の耐塩性及び塩蓄積性における二重能力の評価

代表研究者 東北大学 大学院農学研究科
教授 北柴 大泰

背景

 近年は気象災害が世界各地で頻発し、乾燥地や塩害地の拡大も進み、農耕に適した土地の減少が進んでいる。根本的な原因の一つである温暖化ガスの排出を削減する取り組みの一つに再生可能エネルギーの利用がある。ナタネ(セイヨウナタネ)の油脂は食用油として利用される一方で、油脂からバイオディーゼルも製造され、カーボンニュートラルなバイオマスエネルギーとしの利用がEUを中心に広がっている。また、世界の耕地面積の40%以上が乾燥害や塩害で悩まされている中で、それを克服するためのナタネの遺伝的な改良の研究が進められている。申請者も遺伝学的な研究を進めた結果、高い耐塩性を示しかつナトリウム(塩害の主要因)を高蓄積、または、高い耐塩性を示しかつ低蓄積と、二つの能力が優れているナタネ系統を、調査した多くの系統から選抜した。

目的

 選抜系統の実用的利用を推進することを目標に、高濃度のナトリウム塩に対する1)耐塩性の強さ、2)Naの地上部と地下部への取り込みや蓄積能力、3)申請者が見出している関与遺伝子の応答性を明らかにし、実圃場レベルでの試験に向けての基礎データを得る。

方法

<材料> 高耐塩性を示しナトリウム(Na)を高蓄積する複数の系統と、高耐塩性を示しNaを低蓄積する複数の系統を評価する。
<耐塩性および塩蓄積能力の評価> 高い塩濃度(200 mM NaCl以上)の条件下で栽培し、耐塩性程度とNa蓄積量を調査する。本研究では栄養成長期での調査を行い評価する。
<関与遺伝子発現のモニタリング> 遺伝学的研究により同定した2つの関与遺伝子を中心に塩処理による遺伝子発現をモニタリングする。

期待される成果

 高いNa蓄積能力を持つ系統は除塩作物としての利用が期待できる。低いNa蓄積能力の系統は商業的栽培としての利用が期待できる。また、二重能力の高いいずれの系統も、持続的な緑地の保全やバイオマスエネルギー生産に貢献しうる。