地球環境研究助成

地球環境研究助成04-03

欧州グリーンディール具体化のための新産業戦略と日EUグリーンアライアンス

代表研究者
立教大学 経済学部・教授
蓮見 雄

研究の背景・目的

背景:2019年末にEUが新たな成長戦略として公表した欧州グリーンディールは、2020年7月にCOVID-19危機を契機として合意された復興基金の中核に位置づけられ、資金的裏付けを得て、2021年7月に強化された政策パッケージ(Fit for 55)が示された。そして、同年5月、日EUグリーンアライアンスが合意された。さらに、同年12月、Fit for 55の第2弾が公表された。
目的:本研究は、欧州グリーンディールの具体策としての欧州新産業戦略に焦点を当てることによって、EUにおける脱炭素経済への移行経路(transition pathways)の現状と課題を明らかにするとともに、日 EU グリーンアライアンスを通じた日本への影響について分析を行う。

研究内容・課題

 欧州新産業戦略の基礎とされる①気候中立に向けた産業支援(特に水素を含むエネルギーシステム統合、炭素集約型の産業・地域の移行支援のための「公正な移行メカニズム」、洋上再生可能エネルギー、スマート・モビリティ、国境炭素調整メカニズム)、②サーキュラー・エコノミーの構築(特にクリティカル・ローマテリアルズを含む良質の二次原材料確保を目指す新循環型行動計画)、③移行のための投資と資金調達(EU予算、加盟国予算、欧州中央銀行のグリーン対応、タクソノミーと非財務情報開示)に焦点を当てて欧州グリーンディールを分析し、産業界の対応を踏まえて産官学連携に基づく移行経路の共創過程を観察し、④日EUグリーンアライアンスを通じた日本への影響について考察する。

課題解決の研究手法

 欧州委員会は、2023年に欧州グリーンディールを構成する包括的な政策ツールの準備が整うことを想定して法令の整備を進めており、まずEUの一連の政策文書を検討しなければならない。同時に、欧州委員会は多様なステイクホルダー(企業、市民、地域社会など)との対話と協力にもとづいて移行経路を共創するとしており、産業界や市民団体の対応について、それらの声明や報告書を利用して考察する。

期待される研究成果

 2050年気候中立を目指す欧州グリーンディールを実現するための移行経路の共創を目指す欧州新産業戦略の可能性と課題を明らかにすることを通じて、ステイクホルダーの合意に基づく脱炭素経済への具体的な移行経路策定への示唆を得ることが期待される。欧州新産業戦略の経験と成果、およびそこでの日EU協力の過程を明らかにすることは、政府による政策の視点と企業の視点の双方から日本における2050年気候中立実現への移行経路を検討する契機となり、脱炭素経済への転換を進める産官学連携のあり方に示唆を与える。