地球環境研究助成

地球環境研究助成03-02

H2Oを電子源とするCO2の光還元に有効に機能する可視光応答型光触媒開発

代表研究者
京都大学大学院工学研究科分子工学専攻・教授
寺村 謙太郎

研究目的

 我が国は2050年における国内の温室効果ガス(主にCO2)排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とすることを宣言した.しかしながら,全世界的なエネルギー資源不足から石炭火力発電を即時中止することは現実的ではない.CCSに代表されるいくつかの温暖化ガス排出削減技術は開発されているが,根本的な解決にはCO2を再生可能な資源として有効利用可能な人工光合成技術(特にH2Oを電子源とするCO2光還元に有効に機能する可視光応答型光触媒)の開発が必須である.

研究方法

 H2Oを電子源とするCO2光還元に有効に機能する可視光応答型光触媒を開発するにあたって,金属イオンドープによるバンドエンジニアリングに着目した.これまでに我々はロジウムイオン(Rh3+)をドープした酸化ガリウム(Ga2O3)やアルミニウムイオン(Al3+)をドープしたチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)がH2Oを電子源とするCO2の光還元に高い活性を示すことを見いだした.本研究ではこれらの光触媒をベースとしてH2Oを電子源とするCO2光還元を検討する.

研究成果

 本研究においてはSrTiO3にドープする金属を検討し,中でもMgを少量ドープしたSrTiO3(Mg-SrTiO3)がAlをドープした時に比べて,COの生成速度が約2倍向上することを見いだした.未ドープのSrTiO3を用いた場合には全く反応が進行しないことから,金属ドープがCO2光還元達成のキーポイントとなっている可能性が高いと考えられる.Mg-SrTiO3の吸収端は390nm程度であり,着実に可視光応答化(400nm以上)に近づいていると考えられる.

まとめ

 国内外におけるH2Oを電子源とするCO2光還元に関する研究は非常に少ないのが現状である.我々はこれまでにこの反応に高い活性および選択性を示す光触媒群を見いだしており,今後の可視光応答型光触媒開発のアドバンテージを有していると考えている.

地球環境保全・温暖化防止への貢献

 H2Oを電子源とするCO2光還元は植物の光合成を模倣した人工光合成技術の一つである.今後も研究を続けることによって,効率的に機能する可視光応答型光触媒が見出されれば,その結果は世界初であり,太陽光利用によるCO2再資源の実用に向けた研究が促進されると期待できる.

主な成果発表

(1) Exploring Effective Non-metal Inorganic Cocatalysts for the Photocatalytic Conversion of CO2 Using H2O as an Electron Donor, Xu, Xuanwen; Asakura, Hiroyuki; Hosokawa, Saburo; Tanaka, Tsunehiro*; Teramura, Kentaro*, ACS Applied Energy Materials (2022), 5(9), 11379-11385
(2) Development of Photocatalysts for CO2 Capture and Conversion, Kentaro Teramura, Kazutaka HORI, Yudai HASEGAWA, Yosuke TERAO, Hiroyuki TATSUMI, Rui PANG, Zeai HUANG, Shoji IGUCHI, Zheng WANG, Hiroyuki ASAKURA, Saburo HOSOKAWA, Tsunehiro TANAKA, 2022 Taipei International Conference on Catalysis (TICC-2022), Online Meeting, 11:00-11:15, July 21, 2022