市村地球環境学術賞

第52回 市村地球環境学術賞 貢献賞 -01

ナノマテリアル機能開拓に基づくレアメタルフリー次世代電池材料の創製

技術研究者 東北大学 多元物質科学研究所 金属資源プロセス研究センター
教授・センター長 本間 格
推  薦 東北大学

研究業績の概要

 研究の背景:地球温暖化対策の中で最も期待を集めているのが太陽光・風力発電、燃料電池、蓄電池などの電力エネルギーデバイスの普及拡大である。近年はハイブリッド・電気自動車等の市場が急拡大している状況であるが、将来的に問題となるのが電池部材に用いる金属材料の資源的な制約である。例えば、リチウムイオン電池電極材料の構成元素であるリチウムやコバルトなどのレアメタル資源は将来的に逼迫する可能性が示唆されている。また、燃料電池の電極触媒である白金も逼迫する可能性が高い。
 研究技術の概要:本研究ではレアメタル(希少金属)を使用せず資源豊富な元素だけを用いた二次電池・燃料電池の高性能電極材料開発を行った。超臨界水熱合成や水熱電解法など水を反応溶媒とした環境に優しいプロセスを用いて金属クラスター、ナノ結晶粒子、グラフェン、単原子層シートなどの最先端ナノマテリアルの精密合成技術を確立し、ナノサイズ効果に起因する優れたエネルギー貯蔵・変換機能を開拓することによりレアメタルフリーの革新的電極材料を創製して安価・高性能電池デバイスに応用した。
 特徴と効果/実績:本研究は世界で最初にグラフェンのリチウム貯蔵特性を調べ、現行のグラファイト負極に比較して約2倍のリチウムイオン貯蔵特性を有することを明らかにした。また柔軟性に優れたグラフェン添加が充放電サイクル特性を向上させることを見出し、現在のリチウムイオン電池に応用された。さらに原子数個レベルの白金クラスターをグラフェン表面に安定に担持する合成法を見出し、高活性かつ白金使用量の極めて低い燃料電池の電極触媒材料を開発した。リチウムイオン電池正極材料のコバルトフリー化のため資源豊富な遷移金属である鉄やマンガンを構成元素とするポリアニオン化合物活物質(例えばLiFePO4やLi2MnSiO4)を設計し、それらの単分散性ナノ結晶粒子を超臨界水熱合成法により作製した。さらにナノ粒子から固体電解質を創製して高安全性の全固体電池を開発した。資源豊富な元素化合物のナノマテリアル機能を開拓することでレアメタルフリーかつ高容量・高出力で安価な蓄電池電極材料の開発に成功した。

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