市村学術賞

第41回 市村学術賞 貢献賞 -05

制御された環境場におけるアクティブナノプローブ計測技術の開発

技術研究者

独立行政法人 物質・材料研究機構 ナノ計測センター
センター長 藤田 大介

推  薦 独立行政法人 物質・材料研究機構

研究業績の概要

 受賞者は、表面ナノマテリアルの創製と計測評価の研究に長年従事し、ナノ創製とナノ計測の融合実現のため、環境場制御と融合したナノ計測(アクティブナノ計測)を提唱し、そのナノプローブによる実現に取り組んできた。これは、制御された環境場や物理的相互作用(アクティブ操作)を計測空間に付与しながらナノエリアの計測を行う概念で、ナノマテリアルの創製や機能発現に係わる場を実現しながらナノプロービングを行う(アクティブナノプローブ計測)ことにより、材料創製メカニズムや新規機能探索の強力な研究手法を提供することを目指したものである。
 アクティブナノプローブ計測技術として、1 極限的な環境場(極低温、強磁場、極高真空)における高分解能走査型トンネル顕微鏡(STM)、2 制御された応力歪み場を試料表面に付与しながら原子分解能イメージングを実現する応力場SPM、3 超高真空環境場における探針原子移送によるナノ構造創製技術などを開発した。その結果、応力印加により大きく変化する表面ドメイン構造のその場観察が可能となり、歪みによる半導体表面の構造制御と機能発現にとって重要な研究手法となることを示した(図1)。また、極低温環境STMにより長年の問題であったSi(001)表面の基底状態を確定するとともに、表面に注入する電荷のエネルギー制御により表面超構造を可逆操作できることを見出した(図2)。この成果は半導体表面モデリングに重要な基礎的知見を与えた。
 本技術研究で開発されたナノ創製とナノ計測が可能なアクティブナノプローブ計測は、今後大いに進展し、半導体/金属のみならず磁性材料、有機バイオ材料など広範なナノマテリアル分野や次世代半導体基板材料開発において強力な研究開発ツールになると期待される。

図1 応力場SPMによる表面ドメイン制御とその場観察
図1 応力場SPMによる表面ドメイン制御とその場観察


図2 極低温STM電荷注入による構造制御
図2 極低温STM電荷注入による構造制御