市村学術賞

第48回 市村学術賞 貢献賞 -02

構造制御された有機−無機コンポジット微粒子の創製とその応用

技術研究者 東北大学 多元物質科学研究所
准教授 藪 浩
推  薦 東北大学

研究業績の概要

 高分子材料の一形態である高分子微粒子は、様々な産業分野において部材として使用される基幹的材料である。従来高分子微粒子は乳化重合などの手法により合成され、その構造制御や得られる高分子の種類などに限りがあった。候補者は疎水性高分子を有機溶媒に溶かし、貧溶媒を加えた後、有機溶媒を蒸発除去するというプロセスで多様な高分子材料から微粒子が形成できる「自己組織化析出 Self-ORganized Precipitation (SORP)法」を独自に考案した(図1)。本手法は従来微粒子化が困難であった多様な機能性高分子材料に適用可能であり、簡便かつ低環境負荷なプロセスである。
 さらに、SORP 法の特徴は異なる高分子の混合物であるポリマーブレンドや、異なる高分子鎖が連結したブロック共重合体からも微粒子の作製が可能であることである(図2)。これらの高分子材料は微粒子中に相分離構造を形成し、微粒子内部にラメラ構造やヤヌス型、コア-シェル型などのナノ構造が形成できることを世界に先駆けて見いだした。
 内部構造を持った微粒子中に発光性・電場応答性・磁場応答性を持つ無機ナノ粒子を導入する事で、高度機能化についても検討を行い、ナノ構造を持つ発光性微粒子や、さらには磁場に応答して回転・並進運動を行い、電子ペーパーの表示素子への展開が期待できる磁性ヤヌス型微粒子など革新的な機能性材料の開発を行った。
 本研究成果は国内外で高く評価されており、本研究に触発された機能性微粒子の作製や、ナノスケールで閉じ込められた空間での相分離構造の検証などが国内外のグループから報告されており、当該分野における学術的な発展にも大きく貢献した。

図1

図2