市村学術賞

第48回 市村学術賞 貢献賞 -05

光インターコネクションに向けた半導体光素子・光配線の研究開発

技術研究者 東京工業大学 大学院理工学研究科
准教授 西山 伸彦
推  薦 東京工業大学

研究業績の概要

 光通信技術は、大陸間・都市間通信に代表される長距離光ファイバ通信によって広く用いられておりインターネットを利用する現在のICT(Information Communication Technology)社会の基幹技術である。その技術は広く拡大しており、家庭・オフィスでの通信だけでなく、今やデータセンターやスーパーコンピュータの中へも浸透しようとしている。受賞者は、光インターコネクションと呼ばれるデータセンター・スーパーコンピュータ用光通信に関して、現状技術の先を行く半導体光素子・光配線の研究開発を積極的に進めてきた。
 まず、コンピュータボード間光インターコネクションにおいて、低消費電力光源である面発光レーザに関して光の偏波方向をも制御した完全単一モード動作を実現した。続いて、光ファイバ通信に適した長波長帯で動作する面発光レーザに関して、世界で初めて85°Cの高温下でも毎秒100億ビットでのデータ伝送が可能な素子を実現することに成功した(図1)。現在では、この技術はインターコネクション用光通信だけでなく、センシング分野などへの展開も行われている。
 次にボード内大規模集積回路(LSI)チップ間光インターコネクションに関して、LSI にも利用されるシリコンプラットフォーム上に、低い温度で直接III-V族半導体層を形成する異種基板接合技術を光素子に適応させることに成功し、駆動電流密度の低いシリコン基板上半導体レーザを実現し、将来の大規模光集積回路への可能性を示した。
 最後にLSI チップ内光インターコネクションに関して、LSI電子回路の直上に3次元のシリコン光配線を形成する技術を確立するとともに、高効率に複数の配線層間の信号伝送を可能とする層間光カプラを提案し(図2)、実際の作製により複数の配線層間で毎秒500億ビットの信号を伝送することに成功した。

図1

図2