市村学術賞

第49回 市村学術賞 貢献賞 -03

光ラジカル反応を基盤とする含フッ素有機化合物の合成法の開発

技術研究者 お茶の水女子大学 基幹研究院
准教授 矢島 知子
推  薦 お茶の水女子大学

研究業績の概要

 含フッ素有機化合物は、フッ素の有するユニークな性質から医農薬品、機能性材料として欠かすことのできない化合物である。しかし、天然に存在する含フッ素有機化合物は10種程度しか知られておらず、人間の手で合成しなければ入手することができない。さらにそのユニークな性質ゆえに、合成には一般の有機合成手法がそのまま適用できるとは限らず、その合成法の開発は急務となっている。
 受賞者は、これまでにラジカル反応を用いた一連の含フッ素有機化合物の合成法を開発しており、新規含フッ素化合物の合成を可能としてきた。これらの合成法ではフッ素を有する光学活性アミノ酸・ペプチド類、アセン類、高分子化合物を含む様々なこれまで供給することのできなかった化合物を生み出すことができる。さらにこれらの手法は、光照射をはじめとする簡便な操作で、高価な試薬や毒性の高い試薬を用いない環境適応型の反応となっている。
 本研究成果により簡便、安全かつ安価にこれまで合成が困難であった様々な新規含フッ素有機化合物の供給が可能となったことは、新しい医農薬品、機能性材料の開発に直結し、便利で快適な社会の構築に向けて大きな貢献ができるものと考えている。

図1

図2