市村学術賞

第53回 市村学術賞 貢献賞 -01

原子精度サブナノ粒子材料の開発

技術研究者 東京工業大学 科学技術創成研究院
教授 山元 公寿
推  薦 東京工業大学

研究業績の概要

 幅広いナノテク素材のなかでナノ粒子は学術的にも工業的にも重要な材料にも関わらず、ひと回り小さいサブナノスケールの粒子(サブナノ粒子)は未開拓の材料である。サブナノ粒子の原子数、異種原子配合比が、原子精度で精密に制御が出来ないためである。70種類も存在する実用元素を原料に、精密で自在に操りサブナノ粒子をつくるシステムこそが、未知の次世代ナノ材料の誕生に繋がり、ポストナノテク戦略として強く望まれている。
 受賞者はこの未踏の「ナノサイエンス」に挑戦し、「ナノ粒子」の機能をはるかに凌駕する原子精度のサブナノサイズの粒子の開発に成功している。その原動力となった独自のアトムハイブリッド法は殆どの実用元素に応用可能で汎用性の高い手法として、世界的にも高く評価されている。既に230種を超えるサブナノ粒子のライブラリー化を達成し、ポストナノ材料に向けた新しい物質化学を拓いている。これまで理論に留まっていた超原子(構成元素とは全く異なる元素の性質に変化)を、Alの13原子サブナノ粒子を量的に合成し、ハロゲン超原子として世界で初めて実証した。この成果はNatureのInteractive Periodic Tableに採用されている。更に、他に類例のない6元素を含むサブナノ合金の合成に成功し、数多くの新しい異種元素ハイブリッド合金粒子の創製を達成している。開発したアトムハイブリッド法は、ナノ粒子より1000倍以上高活性なアルカン酸素酸化触媒、市販触媒の20倍以上高活性な燃料電池触媒、ナイロンの工業原料のクリーンで安価な製法、ボロフェン類縁体など数多くの革新的な機能材料を誕生させている。更にサブナノ粒子に周期律があることを発見し、超周期表として発表、メンデレーエフの周期表の21世紀版として物質科学界にインパクトを与えている。
 超周期表は所望の機能を持つサブナノ材料の設計指針となるもので、アトムハイブリッド法と組合せて、超原子のオンデマンド合成による新しい物質群を拓くものである。元素特性を自在にデザイン、創出できるという夢の次世代科学技術へつながると期待される。

図1

図2