市村学術賞

第52回 市村学術賞 貢献賞 -04

分子解像度での生命システム解析技術の開発

技術研究者 京都大学 高等研究院 物質−細胞統合システム拠点
教授 谷口 雄一

研究業績の概要

 受賞者はこれまで、生命が有する分子システムの動作原理の解明を目指して、物理学、化学、計算科学、情報学、工学の各分野の先端技術を融合させた、新原理の実験技術の創出とそれらを用いた生命原理の追求を行ってきた。特に、次世代DNAシーケンサーを用いた分析と、スーパーコンピュータを駆使した大規模分子動力学計算とを新たに組み合わせ、細胞内ゲノムの立体構造を基本単位であるヌクレオソームの分解能で導くことに世界で初めて成功した(図1)。一方で、超高感度顕微鏡と微細加工技術、細胞株ライブラリ構築技術を組み合わせ、1細胞の遺伝子の発現動態を網羅的に1分子レベルで定量化し、1細胞遺伝子発現の基本的性質を解明することに成功した。さらには、1分子レベルで生物試料内の対象分子の空間分布を解析できる顕微鏡を発明し、世界最大手の光学企業から全世界的な製品化を行うことに成功した。受賞者の業績はCell誌の表紙として選出される等、極めて高い国際的評価を受けており、近年進展が進む定量生命科学分野の研究に世界的な影響性を与えるのみならず、幅広い理工分野の融合による学際的な学問領域の創出に顕著に貢献するものと評価できる。

図1