市村学術賞

第58回 市村学術賞 功績賞 -02

メディアセキュリティ・フォレンジック分野における先駆的研究開発と応用展開

技術研究者 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
国立情報学研究所 情報社会相関研究系
教授 越前 功

研究業績の概要

 スマートフォンの爆発的普及やメディア処理技術の高度化に伴い、現実空間のあらゆる情報がサイバー空間で無秩序に共有・分析・改変され、深刻なプライバシー侵害やセキュリティリスクが生じている。受賞者は、これらに対処するためメディアセキュリティ・フォレンジック分野の研究開発を主導し、以下の顕著な学術成果と社会実装を達成した。
 ア)画像・映像盗撮防止技術(2009-2014年):人間の視覚と撮像デバイスの分光感度特性の差異に着目し、スクリーン等に表示された情報の盗撮を防止する技術を世界で初めて確立した。表示装置側の実装によって、コンテンツの著作権侵害や情報漏えいを防ぐ本技術は、サイバーとフィジカルの境界におけるセキュリティ課題を解決する先駆的成果である。
 イ)生体情報保護技術(2012-2017年):上記技術を応用することで、人間の視覚には違和感を与えず、カメラによる顔検出のみを不能にする技術を世界で初めて確立。福井県鯖江市との連携により「PrivacyVisor」として製品化した。また、遠隔撮影された画像からの指紋盗撮リスクを世界に先駆けて実証し、利便性を損なわずに指紋情報を保護する「BiometricJammer」を開発するなど、生体情報保護の新たな手法を確立した。
 ウ)フェイクメディア対策技術(2016年-現在):AIによるフェイク顔映像の検出および改ざん領域推定手法を世界で初めて提案し、「Deepfake detection」という新たな研究分野を創成した。さらに、本成果を社会実装したフェイク映像自動判定システム「SYNTHETIQ VISION」を開発し、国内初の実用化を達成した。国内外の公的機関や多数の企業で導入されている。
 受賞者の成果は、国民の安全・安心の向上に直結するものである。受賞者は、JST CRESTやJST K Program等の大型国家プロジェクトで中心的役割を担うほか、国立情報学研究所シンセティックメディア国際研究センター長として国際共同研究を推進しており、当該分野のさらなる発展と次世代人材の育成が期待される。

図1


図2