市村学術賞

第58回 市村学術賞 貢献賞 -02

横型熱電変換の原理開拓と応用展開

技術研究者 国立研究開発法人 物質・材料研究機構
磁性・スピントロニクス材料研究センター
上席グループリーダー 内田 健一

研究業績の概要

 受賞者は、熱と磁気(スピン)の相互作用が誘起する物理現象や原理を次々と発見・解明し、スピントロニクスと熱エネルギー工学の融合分野「スピンカロリトロニクス」の端緒を創った。特に、スピンカロリトロニクスと実用省エネルギー・創エネルギー技術の間に立ちはだかる大きな壁を打ち破り、持続可能社会の実現に貢献すべく、電流と熱流が直交する方向に変換される「横型熱電変換」の新原理開拓と材料・デバイス開発に取り組んできた。この取り組みの一環として、スピンカロリトロニクスの知見・技術を結集して、永久磁石でありながら高性能の横型熱電変換が発現する新しいエネルギー材料「熱電永久磁石」を創製した。熱電永久磁石においては複数の横型熱電変換原理が同時に発現可能であり、それらによるハイブリッド発電により出力を向上させることができる。熱電永久磁石により構築した熱電モジュールにおいて観測された単位温度勾配あたりの電力密度は、横型熱電変換素子として世界最高値であり、市販の縦型熱電モジュールの水準にまで達している。横型熱電変換素子はさらなる高出力化のための大面積化が容易で、機械的耐久性が高いと期待される。また、電極部の接触電気・熱抵抗がないためモジュール化による性能劣化が少ないなど応用上の利点が多く、エネルギーハーベスティング技術・電子冷却技術にブレークスルーをもたらす可能性がある。熱電永久磁石を用いれば、磁石が使われているあらゆるデバイスに発電・冷却機能を付与できるため、通信用端末やIoT用センサーのオフグリッド電源としての応用展開が期待される。

図1