第58回 市村学術賞 貢献賞 -03
人工クモ糸のデータベース駆動型設計と環境低負荷繊維材料の創出
| 技術研究者 | 京都大学 大学院工学研究科 教授 沼田 圭司 |
研究業績の概要 |
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クモ糸は既存の構造材料では達成できない力学物性を示すと同時に、環境分解性を有し、様々な産業分野から注目されてきた。現在では、受賞者の成果を基に社会実装が始まっている。受賞者は、クモ牽引糸の形成機構を分子レベルで明らかにした。シルクタンパク質が液-液相分離を生じ、そこから3次元的なマイクロフィブリル状の網目構造を形成することを世界で初めて報告し、その知見を活かした人工紡糸の開発に応用してきた。クモの牽引糸をモチーフとすることで、環境低負荷なバイオ高分子材料、特に、繊維材料の創出に成功している。また、クモ糸の化学構造と構造物性をデータベース化し、データ駆動型の分子設計により耐水性に優れた人工クモ糸の開発を可能にした。この耐水性人工シルク(人工クモ糸)は、特許ライセンス先である企業から既に上市されている。さらに、クモ糸を構成するシルクタンパク質を、従来型の発酵法で生産するためには多大な炭素源と窒素源が必要であり、環境低負荷とは言い難かった。そこで、受賞者はシルクをはじめとした構造タンパク質を、光合成生物、特に海洋性紅色光合成細菌を利活用して生合成する基盤技術を研究すると共に、京都大学発スタートアップ企業を通じて、世界で初めて紅色光合成細菌の大規模培養に成功した。現在では、光合成細菌に加えて他の光合成生物を利用したバイオものつくりを展開している。以上のように、クモ糸ビッグデータを利用した高分子設計と光合成生物を利用した生産技術の方向性を示すことで、二酸化炭素からの生合成と二酸化炭素への環境分解が可能な、完全な環境循環型バイオ高分子材料を創出する科学基盤を構築することに成功した。
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