市村学術賞

第58回 市村学術賞 貢献賞 -04

デジタルリキッドバイオプシーの開発と応用

技術研究者 国立研究開発法人 理化学研究所
開拓研究所 渡邉分子生理学研究室
主任研究員 渡邉 力也

研究業績の概要

 デジタルリキッドバイオプシーは、血液や唾液などの液性検体中に含まれる微量なバイオマーカーを1分子レベルで検出・定量し、疾患診断へと直結させる体外検査技術である。それらは、侵襲性が低く、早期診断や経時的モニタリングに適することから、幅広い疾患領域への応用が期待されており、医療検査の概念を刷新し得る次世代技術として国際的に注目されている。
 本業績では、受賞者が基礎研究として確立した独自の1分子計測技術を基盤とし、遺伝子から酵素に至る多様な分子種を共通原理で検出可能な、世界初のデジタルリキッドバイオプシーを創出した。本技術は、従来法では困難であった超低濃度領域におけるバイオマーカーの高感度・高精度検出を、短時間かつ定量的に実現しており、診断性能・速度・汎用性の点で既存技術を大きく凌駕するものである。
 さらに、本業績では要素技術の開発にとどまらず、全自動小型検査装置を併せて開発することで、臨床現場での運用を可能とする実装技術まで一貫して確立し、これにより、研究室レベルの先端計測技術を実際の医療検査へと橋渡しする道筋を示した点は特筆に値する。
 加えて、本技術は医療分野に限定されるものではなく、農業・畜産業をはじめとする周辺生物産業への応用展開も進んでおり、病原体検出や生体機能評価など多様な場面での活用が期待されている。
 以上より、本業績は新規体外検査技術の創出から実装までを一貫して示した、独創的かつ先進的な成果であり、次世代の医療検査のみならず、広範な生命科学・生物産業分野への貢献が強く期待される。

図1