新技術開発助成

第109回新技術開発-03

パルス大電流を用いたコンベア型アニサキス殺虫装置の試作開発

技 術 開 発
契 約 者
株式会社 ジャパン・シーフーズ
代表取締役社長 井上 陽一
所 在 地
福岡県福岡市
技   術
所 有 者
株式会社 ジャパン・シーフーズ
技   術
開 発 者
技術開発契約者に同じ

技術開発内容

 アニサキス食中毒は我が国食中毒件数のおよそ半数を占めており、その予防は極めて重要な課題である。アニサキスは、甲殻類や貝類以外の我が国で生食に供される海産物の殆どに寄生している。温度変化に弱いことから、加熱・冷凍が有効な予防手段であり、生食用途に対しては、冷凍処理が確実な殺虫方法として厚生労働省により推奨されている。しかし冷凍によって、魚の品質が低下することはよく知られている。このため一部では、目視除去が行われているが、100%の除去は困難であり、また人件費がコスト要因になる。
 開発者は、アニサキスが電気ショックにより死ぬことを見出し、塩水中のフィーレ(3枚おろしにした魚切り身)にパルス大電流を流すことでフィーレ中のアニサキスを殺虫する技術開発に挑み、これまでに、塩水の電気伝導度を制御しつつ繰り返しパルス大電流を加えることで、処理槽中に投入した150 枚程度のフィーレを約6分で処理しうるバッチ型殺虫装置の開発に成功した。しかしこの装置では、生産性が低い点とともに、身が柔らかい魚では、電流印加による塩水温上昇を防ぐために行われている水流攪拌によりダメージを受ける問題があった。
 本開発においては、フィーレをコンベアに載せて塩水中に搬送し、コンベアの上下に設けた電極間を通過する間にパルス大電流を流すことで、連続的に殺虫処理を行う装置と技術を開発する。フィーレを浮かさずに、フィーレを傷めずに、搬送しうる構造のコンベアを試作開発し、確実な殺虫と実用的な処理量を両立しうる適切な処理条件を見出す。
 水産加工場における処理ラインに組み込み可能な処理装置が実用化できれば、アニサキス食中毒のリスクのない、高い品質の生食用フィーレが広く市場に提供可能となると期待される。開発者は、自社における生産に適用するほか、鮮魚加工を行う多くの業者に技術を提供することを構想しており、我が国の食品の質と安全の向上への貢献が期待される。魚の生食が海外でも関心を持たれる中で、インバウンドの拡大や、和食文化の世界への普及加速に繋がることも期待される。

図